プロジェクトストーリー~長軸LNG燃料供給ポンプ開発秘話~

シンコーでは、「長軸LNG燃料供給ポンプ」を、若手社員を中心に開発しています。
経験が浅くても、若手のうちからチャレンジすることで、社員一人ひとりの成長へと繋がります。

PROJECT 01長軸LNG燃料供給ポンプ
開発秘話

PROJECT MEMBER

技術本部 設計一部
部長

1996年入社。ポンプ設計業務に従事した後、長軸LNG燃料供給ポンプの開発を担当。
その後、ポンプ全般の設計業務統括に携わっている。
技術本部 設計一部 
ポンプ設計課
課長補佐

2011年入社。CAEを利用したポンプ開発等に従事しており、その延長線上で長軸LNG燃料供給ポンプの開発を担当。
その後も、同様の業務に携わっている。
技術本部 設計一部 
ポンプ設計課

2018年入社。サブマージド型LNGポンプの基本設計に従事した後、長軸LNG燃料供給ポンプの開発を担当。
その後、同ポンプの改良設計に携わっている。
技術本部 設計一部 
ポンプ設計課

2021年入社。陸上ポンプの見積業務及びLCO2カーゴポンプの開発業務に従事した後、長軸LNG燃料供給ポンプの開発を担当。
その後、同ポンプのコストダウンや改良に携わっている。

PROLOGUE

脱炭素化の加速でエネルギー市場が転換期を迎えている中、LNGポンプ市場が活況を呈しています。
LNG(液化天然ガス)は燃焼時のCO2排出量が石炭の半分という比較的環境に優しいエネルギー。
最近はLNGの運搬船以外でもLNGを船舶燃料として使用するケースが増えてきました。
シンコーは今後ますますLNGを燃料とする船の増加が見込まれることから、新たに長軸の「LNG燃料供給ポンプ」を開発。
次世代を担う若手社員を中心とした開発メンバーに話を聞きました。

普段の仕事内容を教えてください。

私はポンプ設計業務全般の統括をしています。開発業務の統括に加え、調整役として他部署との折衝も行います。
設計現場の指揮が主な役割です。設計の基本的な骨格を作り、各人に仕事を割り振ります。若手社員の教育や他部署との連携も担当しています。
私の役割は構造等の設計です。強度解析を行ったり、新しい部品に対するテスト機を設計・製造して実際テストも行います。
私は上司からおおまかなタスクをもらって、それに対する回答や設計を提案しています。

今回の開発メンバーは
どのように選んだのですか?

まず開発の中核を担うメンバーを決めました。これはポンプの開発経験があり、開発したポンプを今後長く見守っていける中堅社員から。さらに開発に意欲のある若手社員の中からその補助ができるメンバーを選びました。彼らには将来的にシンコーの開発の中枢を担ってもらいたいと思っています。

メンバーに選出された時、
どう感じましたか?

私はもともと開発が主業務ですが、本件は規模が大きいのでわくわくした気持ちになりました。同じ部類の開発を入社4年目に担当したのですが、その時は成功に導くことができず……。なので今回は「リベンジしてやるぞ!」という気持ちがありました。
入社3年目の面談の際に開発業務がやりたいと伝えたら、その1週間後に辞令が下りました。とてもわくわくしましたね。
私は入社2年目の夏に辞令をもらったのですが、入社して間もない頃なのでビックリした気持ちが半分、嬉しい気持ちが半分。すごい方が集まっているので先輩からいろんなことを吸収して設計者として一人前になりたいという気持ちが強かったです。

苦労したことや印象に残っている
ことを教えてください。

今回のポンプはLNGの実液でテストしたのですが、LNGは気化すると可燃性ガスになるので取り扱いに注意が必要で。安全性を担保するため試験前には考えうる限りのあらゆるテストを行いましたが、それでも足りないのではないかと不安でした。あの時期のストレスは相当なものでしたね。
試作・実験の繰り返しの中で、実験がうまくいかなくて苦労しました。実験が失敗するとすぐに対策品を用意しないといけないのですが、各所にあまりに無茶な納期でお願いするので、「おまえはブラックリストに入れておいた!」と冗談で言われたこともあります(笑)。
現場と設計が近いのが弊社の特徴ですが、今回の開発では組み立てをする人、加工する人、部品を調達する人……いろんな人と関わる機会を得ました。ここで築けた関係性は得難いものだと思います。
設計というのはあくまでも机上の産物。自分が設計した図面が実際のモノになった時は達成感を感じました。いろんな方と一緒に作業することで、現場目線の意見をもらうことができたのは大きかったです。

シンコーの強みは
何だと思いますか?

顧客優先の精神です。経営理念にもその旨は記されていますが、こうした経営姿勢を徹底してきたからこそ1938(昭和13)年の創業以来、長きに渡って発展し続けてこれたのだと思います。また、製品に対して常に真摯に対応することも強みです。「逆境に負けず、チャレンジし続ける」という精神がシンコーには受け継がれています。
自社開発と一貫生産体制です。営業~設計~製造~試験~アフターサービスのすべてを担い、素材からものづくりまで一貫して行えるメーカーはなかなかありません。また今回のように若手を積極的に起用するところも強みです。若手社員の向こう見ずだけどポジティブな姿勢は会社全体を前に進めるエンジンになります。
社内に面白い人が多いところです。私もまわりから見たら変わった人間と思われてるかもしれませんが(笑)、話をしているといろんな意見やアイデアがぽんぽん出てくるんです。それを開発に還元できるのはいい部分だと思いますし、私自身もそうした多様な意見を吸収して成長できていると思います。
船主や造船所と信頼関係が築けていることもあり、LNG荷揚げ用ポンプの世界シェア95%以上を誇っているところです。お客様から「シンコーのポンプなら」と言っていただける信頼が強みです。

今回のプロジェクトは未来に
どう活かされると思いますか?

今回の開発を通して経験したこと、わかったこと、苦労したことを糧に、若手社員がシンコーの製品づくりの中核を担う技術者に育ってくれればと思います。そしてこれをきっかけに会社の将来を引っ張る次期の柱になる製品づくりに邁進してほしいです。
入社10年目以下のメンバーが製品開発の一連の流れを経験できたことは大きいです。若手社員がビッグプロジェクトを経験したことで組織のボトムアップは確実に進行しました。今後それぞれが各部署に散り、各自で開発案件を抱える未来が楽しみです。
今回はボルト一本に至るまで設計を行った上、現場との折衝やスケジュール管理など多くの業務を経験しました。これらの経験は今後役立つはずだと考えています。
今回私は一番の若手として勉強しながら成長させてもらいました。特にコミュニケーション能力は向上したと思います。将来年下の社員が入ってきた時は、彼らの指導も行えるよう引き続き学習に励みたいです。

今後挑戦してみたいことを
教えてください。

脱炭素社会の実現に貢献できる製品を世の中に送り出したいです。これまで弊社のポンプは原油、LPG(液化石油ガス)、LNGと時代の変化に応じて新たな製品を開発してきました。世界的に環境危機が叫ばれている今は再び変化のサイクルです。地球環境の保全に少しでも寄与できればと思います。
エネルギーの変遷に伴い、メーカーに求められる技術も変わり続けています。特に近年は変化のスピードが加速して、技術の発展も目覚ましい状況です。時代のニーズを敏感に察知して、引き続きチャレンジの火を絶やさないようにしていきたいと思います。
昨今はAIやデジタル技術が急速に発展しています。世の中でも生成AIやChatGPTの有用性がさかんに協議されていますが、こうした技術に関しても学習を怠らず、先端のデジタルツールを使った業務改善の提案を積極的に行いたいです。
まず1台目の長軸LNG燃料供給ポンプを出荷しましたが、次は大量生産に向けてさらなるコストダウンを目指したいです。アンモニアや水素といったLNG以外の燃料にも使用できるポンプの開発にも携わっていきたいです。